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2006-11-26

能力をめぐる向上と退化

一億総学力低下時代 (内田樹の研究室)

子どもたちの学力低下について「誰の責任だ」と凄んでみせる資格のある人間は日本には一人もいない。

に対して

私の「体感」では、学力はちっとも下がっていないどころか、格段に向上している。

真っ向反論の小飼弾さん

議論がぶつかっているのではなく、かみ合っていない感がある。それもそのはず。「学力」の定義が違っているのである。

弾さんは、次のように学力を定義している。

私にとっての「学力」の定義は、読んで字のごとく「学ぶ力」、すなわち「わからなかったことをわかるようにする力」だ。

内田さんは、文中で明確に定義をしていない。一般に使われる定義を参照しているとみなして良いだろう。手元にある平凡社の心理学事典によると;

学力(academic achievement)とは-略-、今日では学力を教科学習における教育目標への到達度と想定していることが多い。

とある。要するに、学校で勉強したことで得られた能力、つまり教科学習の成果だということだ。学力低下について語る内田さんの文脈に、弾さんが別の視点で反論した格好だ。

内田さんの大学に入ってくる学生の、学力検査で測られる対象としての学力は、おそらく落ちているのであろう。それが、受験生と大学の入学定員数の関係で、学力レベルが相対的に低い人が入れるようになったのか、それとも全国の高校生以下の学力が本当に低下したのかはよくわからないが。

IQという測度で見ると、なぜか10年で3ほど上昇する傾向にあるらしい。(フリン効果)。ハードウェア性能は落ちていないと言うことなのだろう。フリン効果の原因は不明だが、考えられるものとして、環境変化があげられている。

弾さんが主張する、「(娑婆の)学力の向上」は、「Web以降、Google以降」という通信情報環境の変化に多くを依存している。、「学力」を「能力」と読み替えれば、納得がいく。その能力を使って、学力を向上させることは確かにやりやすくなった。

ここ20年くらいの中で、全体として失われた能力と獲得した能力は両方あるが、差し引き獲得した方が多い、というのが感想で、なおかつ能力獲得・維持・向上の手段・環境としてWeb・検索が利用できることの大きさを考えると、私は弾さんの実感に親しいものを感じる。主観によって、獲得したものと失ったものを順不同で挙げてみる。

<できるようになったこと(獲得した能力)>
  ・おいしいラーメン屋を効率的に探して、そこのラーメンを食べにいける
  ・友達と待ち合わせして、何かアクシデントが起きても会える、少なくとも連絡がとれる
  ・実際に会ったことのない人と意見交換をする
  
・プレゼンテーションを短時間で作る
  ・知らない目的地に、自動車で迷わず行ける
  ・預金残高を、銀行に行かなくても調べられる
  ・客先までの、最短の電車経路がわかる
  ・電車の中でテレビを見る(大学の講義を聴く、でもいいけど)

  ・とっくの昔に製造中止になっているおもちゃを、入札して買う
  ・しばらく会っていないクラスメートの消息を知る
  ・英単語のボキャブラリ

<低下した力>
  ・
もの覚え、記憶力
  ・漢字の読み書き
  ・日本語の語彙
  ・暗算、筆算の力
  ・教科書的知識の記憶と運用
  ・基礎体力
  ・集中力

出来るようになったことは、自分個人としても、全体としてもほぼ一致していると思う。逆に低下した力、というのは、個人と全体が必ずしも一致しない。上に挙げたことがらは、全体というより、むしろ個人としての能力の衰えである。例を挙げると「漢籍を素読できる」、「行書や草書で書かれた文字を判読する力」という能力は、全体として出来る人の割合は確実に少なくなっていると思われるが、私の場合もともと獲得していないので、「低下」していない。マラソンで2時間30分を切るのはどう考えても無理だが、行書の判読はこれから勉強すれば獲得可能(希望を込めて)な能力である。

もう一つ言えることは、「獲得」「向上」は多くの場合急激に起こるのに対して、「低下」や「退化」は、個人でも全体でもゆるやかに起こる、ということである。ゆるやかに起こる変化に対しても目配りすることは総体としての能力低下を防ぐ上で重要だと思う。

能力獲得、そして能力の一部としての学力増強のための環境は確実に向上している。環境には多少の経済格差もないわけではないが、PCやインターネット接続環境が整えば、誰にも開かれているとも言える。能力・学力の二極化が起こるとすれば、それは環境格差よりもむしろ、やる気、意欲、好奇心、行動力といったものの差が大きい。

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