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2007-02-18

数学者の書いた「トランプ」の本

小飼弾さんのところで紹介されていた名著、不完全性定理の最後は、こんな文章で締めくくられている。

ともかく私はよい友達に恵まれ、数学や音楽、詰め将棋やリンドグレーンの作品のようにおもしろいものに出会っただけで満足しており、「人間に生まれてよかった」と思っている。



著者の野崎さんを「人間に生まれてよかった」と思わせたもののひとつがトランプのゲーム(ソリテア)だろう。その野崎さんが、ソリテアについて書いたのがこの、「トランプ?ひとり遊び88選」である。
朝日選書「トランプ」野崎昭弘著


ソリテアは、一般にMicrosoft Windowsのおまけとして知られているが、一人遊びを総称するもので、「スパイダー」や「フリーセル」も実はソリテアの一種である。Windowsのソリテアにも「クロンダイク」という固有の名前がついている。

野崎さんはこれにすっかりハマってしまったのだろう。心から面白がって、が書きたくなったと思う。自分で遊んで、勝敗の記録をつけ、愛着の湧いたゲームを紹介している。

書の多くはトランプゲームの遊び方に費やされているが、ちょっとした余談に、著者の並々ならぬ熱意を感じ取ることが出来る。書の出だし、「はじめに」にはこう書かれている。

小さな子とババ抜きをすると、ババがこやしないかと、息をつめてカードを抜くその姿に、感心することがあります。ひよっとしたら、これこそが「人生」ではないか、とさえ思います。
大人になってからも、静かに人生を楽しむゆとりはあってもよいはずです。



また、トランプゲームの遊び方を、文章でわかりやすく記すのはかなり力量のいる作業だ。その意味で、このは説明文の一流の仕事の例でもある。今でも学生の必読書の一つであろう木下是雄の、「理科系の作文技術 」では、「時計」というソリテアの遊び方を書いた部分を引用し、次のように評している。

疑う余地もなく明快ではないか。説明書はこういうふうに書きたいものである。(p195)



なお、「理科系の作文技術」での引用元は1974年に書かれたダイヤモンド社版で、朝日選書版の88選に対して85選となっている。

英語でなら、ソリテアはそこそこ数もあり、英語に対する抵抗感がない人なら、遊び方(ルール)を知るのならそれで十分なのだが、野崎さんのこのは、単なる遊び方にとどまらず、自分が体験したことをベースにした感想や解説が加えられていることが、読むことを楽しくしてくれている。

別エントリーで紹介しようと思うが、今やソリテアの遊び方を「体得」するのは、本よりもゲームの方が適している。収録されている種類からしても、はるかにコンピュータゲームの方が多い。だから、遊び方だけを説明した本はその役割を終えたといっていいほどだ。「客観的説明」よりは「主観的感想、示唆」が重要なのだ。(ただし、日本語では、まともなゲームもないのが現状ではあるが。)

限られた紙幅の中で、トランプの歴史やデザインについても概説されていて、とても味わい深い。そして、日本語で書かれたソリテアの解説書はおそらくこれ以外にはないだろう、という点で貴重でもある。


野崎さんがソリテアに夢中になったきっかけとなったMoreheadとMott-Smithの本はいまでもAmazonで手に入る(1966年のBantam版)。とてもうらやましいことだ。



そして野崎さんの「トランプ」(1990年版)も今のところAmazonで買える。
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